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妊娠中の方の歯科治療について
2010年9月21日
妊娠中の歯科治療は、妊娠初期(2~3か月)は、非常に流産しやすいため、ワンクッションおいて、応急処置に留めます。
その後、妊娠4か月~8か月の間に治療を行います。虫歯や歯周病の為に、不眠症、食事ができない、精神的に不安定などの症状が続けば、胎教にも影響が及ぶために、必要があれば、積極的に治療したほうが賢明です。
胎児の安全を考えてレントゲン撮影は控えることが多いのですが、治療にどうしても必要な時は、防護エプロンを着用し、腹部を遮蔽し、部分的な小さなレントゲンを撮影します。当院では、デジタルレントゲンで対応していますので、さらに、照射量が少なく妊婦さんの身体に優しい治療となっております。
虫歯の治療、抜歯等では、局所麻酔をします。心臓から動脈に入り、胎盤でろ過され、胎児に届くとは考えられず、通常量の使用では母子ともに影響はありません。痛みを我慢するよりは、リラックスして、麻酔をしたほうが、スムーズに治療を受けられます。
妊娠中、授乳中は基本的には投薬はしませんが、痛みがひどい場合は胎教にもよくないため、投薬することもあります。その際には、患者さんの通っていらっしゃる産婦人科の先生と相談し、胎児に影響の少ないものを選択します。長期にわたって、服用することは避けます。また、テトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、胎児の歯を変色、しま模様になるなどの副作用があるため、注意が必要です。
妊娠中は女性ホルモンが6~7倍も盛んになり、この影響で歯肉が腫れやすくなります。2種類の女性ホルモンがありますが、プロゲステロンは歯肉の炎症を増大させ、ホルモン量が増えると、歯肉炎が起きやすくなります。
また、エストロゲンは歯周病の原因となる細菌を増加させます。そのため、妊娠2~3か月は歯肉が腫れたり、出血を伴うことがあり、これを妊娠性歯肉炎と言いますが、妊娠中期によく見られます。
しかし、必ず歯肉炎になるわけでもないので、日頃からのブラッシング、クリニックでのお口のなかのクリーニングをしっかりすれば、防ぐことができます。妊娠中は、「おなかの子の分まで食べてるのよ。」とのセリフがまかりとおるほど、食事、間食の量、回数が増えます。
つわりがひどいせいで、歯ブラシを入れただけで「オェー。」となる方もいらっしゃいますので、さらに、ホルモンのバランスがくずれ、唾液が粘っこくなり、お口の中が不衛生になりがちです。出産後、ホルモンバランスが落ち着くと改善されますが、不潔にしたままだと、重度の歯周病へと進行します。「妊娠中と出産後どちらで治療したほうがいいですか?」という質問を受けますが、出産後は赤ちゃんの世話でとても大変ですので、分娩までに治療を終えたほうがよろしいかと思います。